2007年08月29日
【ポーランド留学体験記 (6)】研究報告2-癌をコントロールする-
ポーランドに留学中の伊藤先生より、留学時最後の研究報告が届きました。
ポーランド留学中の伊藤です。
今回はポーランドで実施してきた癌に関する研究について報告します。
まず、簡単にどのような研究をしているのか簡単に説明します。
図1にように人間の組織は一般に層構造を持っています。

癌細胞は一般に上皮細胞層で生じるようです。そして、初期の段階では皮膜を分解しつつ上皮細胞部分で増殖をします。この段階では、悪性腫瘍とは言わないようです。ところが、中には皮膜の一部を完全に食い破り、ストロマ細胞層へ侵入を試みる細胞種があります。
この現象は『癌浸潤』と呼ばれ、一般にこの段階で悪性と判断されます。
(あるいは、このような性質を持った細胞を総称して癌細胞と呼ぶようです。)
浸潤に成功した癌は血管へと近づくとともに、血管新生物質を分泌して毛細血管を腫瘍内へと誘導します。それに成功すると、血管から養分を得つつ、自分自身はより太い血管内への侵入を試みます。血管内に新入した癌細胞は、人体の他の部分へと広がりはじめます。これが『癌転移』を引き起こします。この段階になると、生命の危険が明らかに生じます。
私が今興味をもって研究しているのは『癌浸潤』のプロセスを数理モデル化し、その現象を可視化技術によってモニター上に再現することです。図2は癌細胞の増殖の様子を2次元で再現したものです。(b)で癌細胞が皮膜を突き破っているのが観察できると思います。

この研究は単なる第一歩に過ぎません。癌の挙動はそれ程単純ではありません。しかし、複雑だからとか神秘的だからと言ってただ単に研究を諦めるのではなく、癌の挙動を何とかして数理モデル化するとともに、可視化技術と連携することによって医学分野への貢献を目指すことが重要だと思います。そのようなチャレンジ精神を工学部の学生には持って欲しいと思います。
帰国後、本研究を学内開発プロジェクトとして申請する予定でいます。
ポーランド・ワルシャワ大学と共同で実施する部分もでてくると思います。是非、好奇心旺盛でチャレンジ精神のある学生は私のプロジェクトに参加してみませんか?
去年の9月1日からポーランドで研究を始めて、あっという間に1年が過ぎ去ってしまいました。本音を言えば、もう少しこちらで研究をしたいのですがそうも言っていられません。9月2日に帰国します。従って、これが最後のポーランド留学体験記になります。帰国後、若い君たちと一緒に研究について語り合える機会があることを楽しみにしています。
※中学生・高校生のみなさんへ:君たちが21世紀に解決すべき問題は癌に限らずたくさんあります。しかし、それを解決するために最も重要なことは幅広い視野を持つことです。今、学校で学んでいる事の多くは自分が解決したい問題に直面したときに必要な基本的な道具となります。入試で使わないからとか、現段階で自分は使わないからといって勉強しないのではなく、幅広い視野に立って物事を見つめてください。きっと新しい発見があるはずです。是非、私の研究室を覗いて見てください。
投稿者 okano : 11:25 | トラックバック (0)