2007年08月28日

【ポーランド留学体験記 (5)】研究報告1-グレイン境界を追跡する-

ポーランドに留学中の電子情報工学科 伊藤先生より、研究報告が届きました。


ポーランド留学中の伊藤です。
今回は、ポーランドで実施してきた研究の1つについて報告します。

みなさんは、グレイン境界という言葉を聞いたことがありますか?
ほとんどの学生は耳慣れない言葉だと思いますので、簡単に説明します。

図1のように肉眼(マクロ・レベル)では1つの結晶【図1の円全体】に見えても、ミクロ・レベルでは様々な方向を向いた小さな結晶【円内の色分けされた部分で、同じ色内の原子はすべて同じ方向を向いているのが特徴】が集まって1つの大きな結晶を形成しています。それは、金属内でも起っている当たり前の現象です。この境界をグレイン境界と呼んでいます。
2007081501_ポーランド研究報告001.jpg

この境界は時間とともに動き、最終的には円内のすべての原子が同じ方向を向きます。
このような時間とともに動く境界を持った問題は自由境界問題と呼ばれ数学の分野でも非常に有名な問題です。

グレイン境界の動きを再現するために様々な数理モデルが次々と提案されています。
そして、コンピュータの発達に伴い、数学では解けなくとも数理モデルとアイデアさえあれば、モニター上に再現することができるようになりました。

私の仕事はオリジナルの数理モデルを数学の枠組みでも解けるように改良するだけでなく、オリジナルの数理モデルでモニター上に再現された現象と改良された数理モデルでのそれにほとんど差がないようにすることです。

図2がモニター上に再現された現象の例です。
初期に観察された内部の小さな部分【特に緑の部分】はすぐに消滅し、中央部分が外側の部分と同じ方向を向く【同じ色になる】ように動いているのがわかると思います。

2007081501_ポーランド研究報告002.jpg 2007081501_ポーランド研究報告003.jpg
           t=0                        t=0.09

2007081501_ポーランド研究報告004.jpg 2007081501_ポーランド研究報告005.jpg
           t=0.99                       t=9.981
                     図2

このように現実事象を見つめながら、数学を使って何とかその事象を解明しようというのが私の研究分野です。高等学校までに習ってきた数学はこのような現象を解明するための単なる基本的な道具に過ぎません。

もっと大事なことは現象を様々な視点から眺め、その現象を数式で表現するアイデアとモニター上に再現する技術です。そのような立場から数学を眺めると結構新しい発見があると思いますよ。
【帰国後は総合科目『実験数学』でこの考え方を伝えたいですね。】

※高校生のみなさまへ:このような研究ができる大学は限られています。是非、近畿大学オープンキャンパスなどを利用して本学を覗いて見てください。普段の高校生活では気づかない新しい発見がきっとあるはずです。試験勉強も大事ですが、入学前に大学の先生と研究分野について語り合うのはもっと大事な気がします。

投稿者 okano : 09:47 | トラックバック (0)