プロジェクト名快適な音環境創りを目指した音響システムの開発研究

内容:1)プロジェクトの特色、2)共同研究参加企業名、3)プロジェクト参加研究者名

4)研究設備整備計画、5)研究内容、6)平成19度までの研究成果New:2008,Jan.,18

 

 

プロジェクトの特色:

プロジェクトの意義地域産業などの多くは中小企業で、経験的試行錯誤による製品開発や改善がなされ、大企業のような研究所や研究担当者を置くことが困難な場合が多い.一方、大学側は、理論的方法論を多く持ち製品開発の指針をし得る立場にあるが、試作・製品化する技術を持たないため、有用な研究であっても実用化できずにいる場合が多い.また、人間生活の質の向上、健康な生活、社会活動の活発化を音環境の立場から支えるには、騒音の軽減のみならず、音響機器から発せられる音の質的な面からも、音環境を保全して行く技術は重要な役割を担うといえる.そこで、@製品の社会的ニーズの調査や提案、A目標設定・試作・製品の作成、B特許などの取得作業を企業側が担当し、大学側が、@提案された仕様を実現するための理論的な設計(構造・材料選定・特性の予測とシミュレーション)、A試作品・製品の特性評価と改善指針の提示、B製品化に向けての種々の問題点解決指針の提示を分担し、両者が協働することによりこうした技術の更なる発展が期待できる.

研究成果の実用化の見通し現在、3種の共同研究を行っており、それぞれに実用化の見通しを持っている.

(1)薄型平面スピーカの開発研究では、電磁型平面スピーカは試作を終え、試験段階であり、近々実用化は可能.静電型平面スピーカ者は、前者の経験を基に構造や材料の選定段階であり、45年をめどに実用化の見通しがある.

(2)屋外音環境改善に関する研究では、屋外スピーカ背面放射音の低減システムの開発を目的とし、吸音・遮音機能の予測評価する手法を基に、音質の劣化を招かない構造の研究中であり、2〜3年後には製品・実用化の見通しである.

(3)ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究では、吸音システムの製品化が3年、振動制御システムの製品化が5年の目処を持っている. 

地場産業との連携による地域振興との関連性:地域企業の製品開発の理論的支援や、高度な測定技術の支援を行い、研究・技術者の育成に貢献できる.

 

共同研究参加企業名

人間の生活環境での音環境改善に興味を持ち、新製品開発の意欲をもって参画いただいた企業は

@ディジフュージョンジャパン:平面型スピーカの開発・製造・販売

A新中央工業:吸音・防音装置の製造

Bサウンド・ミネ:高品位オーディオシステムの設計・製作・販売

の3社です。

 

プロジェクト参加研究者名

本プロジェクトには大学と企業から総勢8名の研究者・技術者に参画いただいており、表1に所属・研究者名・研究課題・プロジェクト内での担当役割を示す。

 

   表1 プロジェクト参加研究者・技術者リスト

 

所属・職

 

研究者名

 

  産学共同研究プロジェクトにおける研究課題

当該研究の成果が共同研究プロジェクトに果たす役割

 

工業技術研究科・教授

 

工業技術研究科・教授

 

工業技術研究科・教授

 

 

工業技術研究科・助教授

 

情報システム工学科・助教授

 

 

 

黒瀬 能聿

 

 

畠山 一達

 

 

西村 公伸

 

 

 

白石 浩平

 

 

高山 智行

 

薄型平面スピーカの研究

 

 

屋外スピーカの背面放射音低減に関する研究

ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究

 

薄型平面スピーカの研究

屋外スピーカの背面放射音低減に関する研究

ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究

 

薄型平面スピーカの研究

 

 

薄型平面スピーカの研究

屋外スピーカの背面放射音低減に関する研究

ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究

 

スピーカのモデル作成

構造設計

 

計測と性能評価

音響計測

 

振動・音響計測

音質評価システムの構築

モデル構築・性能評価

 

材料の選定と特性改善

 

 

音質評価システムの構築

 

(共同研究企業等)

 

薄型平面スピーカの研究

 

 

スピーカの背面放射音低減に関する研究

 

ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究

 

試作,試験、製品化、

品質管理

 

試作・製品化

 

試作・製品化

ディジフュージョンジャパン

 

新中央工業

 

サウンド・ミネ

山本竜太

 

 

萬 宏己

 

峰 辰則

 

 

研究設備整備計画

スピーカなど音響機器の音響・振動特性の測定、平面型スピーカの開発に重要な薄膜の表面性状測定の環境を整え、音響機器による音環境の改善策を見出すため以下の設備を整え、実験開発環境を確立する。

 

  表2 研究設備整備計画予算

      研究設備名

  事業計画額

      主な使用目的

レーザースキャナ振動計

 

     26,000   千円

板の振動特性を2次元的に測定して歪の発生原因を探求し、音質評価との関連探求を行うため

簡易無響室

 

      6,200   千円

人間による音質評価及び聴取実験と音響・振動特性測定の環境を整えるため

走査型プローブ顕微鏡

 

     10,000   千円

ポリイミド表面のコーティング状況(凹凸像、材料表面粗さ、相分離)を観察するため

 

         合   計

 

     42,200   千円

 

 

さらに、私立大学等経常費補助金により、試作機器の評価におけるレファレンスとして、高音質・高忠実度の音響信号再生システムを導入する。

 

 

研究内容

人間生活の質の向上、健康な生活、社会活動の活発化を、音環境の保全という立場からいかに支援できるかを考察し、製品開発に結びつけていく事を目的とする.今現在着手し始めている企業との共同研究をベースに、以下の3テーマを研究課題として取り上げる.

(1)平面スピーカの振動対策と音質改善に関する研究

   液晶ディスプレーの普及に伴い、音響再生装置(特にスピーカ)の薄型化が必要となってきたが、小型化とともに音質の劣化が生じ、長時間の聴取により疲れるなどの問題が起こる.本研究では、平面スピーカの音質改善を目的とし、動作原理の異なる2種類の平面スピーカを対象に、構成材料の選定を、費用、音響放射特性、音質の面から研究し、コストパーフォーマンスの良いスピーカの設計を目指す.また、同時に企業による製品化を行う.特に、静電型スピーカでは、発音機構や構造の開発が重要であるとともに、導電性薄膜を発音源として振動させるため、十分な強度をもつ薄膜の加工技術の開発研究が必要となる.

(2)屋外音環境改善に関する研究

屋外イベントなど公共の場で発せられる音は、大音量であり、そのイベントに興味の無い人(特に周囲の住民)にとっては騒音源となる.一方で、社会活動の活性化には公共のイベントは重要な役割を果たしている. 屋外イベントでは、後方への騒音の配慮が欠ける場合が多く、騒音問題(苦情の発生)を引起している.本研究では、こうした屋外イベントで用いられる音響システムによる騒音公害を低減し、しかも、音質を劣化させない、または逆に音質を向上させ得る、低騒音化システムの開発を企業と共同して行う.同時に、騒音公害低減のための音響システムの設計を支援するため、汎用の減音性能評価シミュレーションプログラムを作成する.

(3)ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究

マイクロホンを通して収録される音響情報には、音源とマイクロホンとの3次元空間での位置関係が1次元の電気信号に畳みこまれている.しかし、ステレオ再生では一次元情報に圧縮されたまま左右のスピーカ間に音源の音像が配置するのみで、収録現場の空間的様相を聴き取る事は困難である.本研究では、この原因が音響再生時に混入する種々の雑音(反射音、振動、電気的雑音など)にあると考え、こうれらの雑音をいかに低減するかの方策を、企業とタイアップして研究し、製品化して行く.特に、室内での反射音の影響、オーディオ機器の振動・雑音対策により空間情報の再現が可能となることが経験的に知られており、その原因究明を理論的立場から試みる.また、雑音の低減により、楽器や人の声、自然音など、もともとの音源がもつ音の情報を人工的に加工・色付けすることなく、自然で疲れ難い再生音を実現するとともに、録音された状況をそのまま再現し得る音響システムの構築法の確立を目指す.こうした試みの多くは場合経験的になされてきているが、理論的背景を確立することにより、オーディオ装置のCDなどの音源に収録された音響情報(音源の3次元的空間配置)を忠実に再生するシステムを総合的に開発することを目指す.

以上の各研究に共通して、音質評価は不可欠でるが、音響物理測定にのみ基づく音質評価では十分な対応がのぞみ得ないため、人間の繊細な感性を用い、しかも普遍的に評価できる音質評価システムの確立が必要である.

 

 

達成目標

(1)平面スピーカの振動対策と音質改善に関する研究

3年目までの達成目標:@電磁型平面スピーカの振動モード解析と再生音質の関係を解明し、平面振動板の歪振動を抑制するフレームの改善指針の提示を行う.また、指針に従って試作品の改善を行い、量産ラインに乗せる.A静電型平面スピーカの構造設計を完了する.特に重点問題である音響出力確保のための薄膜材料選定とその表面加工技術の研究開発を目標とする.B放射音の音質評価システムを確立し、物理測定では判明し得ない聴覚上の問題点を評価するとともに、利用者への生理的・心理的影響を評価するシステムも整える.

5年目までの達成目標:@電磁型平面スピーカの新たな問題に対するリサーチ A静電型平面スピーカの生産加工における問題点のリサーチ対処 B音質評価システムによる評価結果と音質影響因子の物理要因との関連を解明する.  

(2)屋外音環境改善に関する研究

3年目までの達成目標:@通常用いられるPAシステムに適用し、ステージ正面などイベントの対象となる方向には音質の変化を起こさずに通常と変化無く利用でき、ステージ背面方向への騒音の影響を低減し得る減音装置(遮音箱)を設計する.ただし、遮音と吸音の機能を組み合わせてスピーカシステムからの背面への放射音を遮音し、しかも、聴衆側への影響がないよう設計し製作する.A遮音箱の設計と同時に減音の性能を予測するシミュレーションプログラムを作成する.B多様な形状のスピーカシステムに適用可能な形状、構造、構成を持ち、持ち運び、汎用性を持たせる.C(1)と同様に、本装置を用いた場合の放射音の音質評価を行い、改善方針を立てる.

5年目までの達成目標:@本装置の問題点・改良点をさらに探求し改善を施す. A構造についても一層使いやすく性能を損なわない改善を行う.B遮音・吸音評価シミュレーションプログラムの汎用化. 

 

(3)ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究

3年目までの達成目標:@室内音環境の制御は、再生音の音質に大きく影響するので、第一目標として、室内壁面での反射音の制御を行うための吸音システムを開発する.第一に、素材の影響が大きく現れ、再生音の特性を変えてしまうため、音質への影響が少ない吸音材選択を行う.次に、吸音力と表面反射の問題を考慮し、最適な表面形状の設計を行う.A試作品を作成し、吸音特性を測定する.B(1)と同様に、吸音システムを用いた場合の再生音の音質評価を行い、改善方針を立てる.

5年目までの達成目標:@第二段階として、オーディオ機器の振動対策が音質にどの様に影響するかを振動メカニズムと電気信号伝送メカニズムとの関係から解明する.そして、音質向上、再生音のリアリティー向上のために最適な振動対策手法の提案を行い、オーディオ装置に実装する. 

 

 

産学共同研究の体制

役割分担:各研究課題に共通して、市場のニーズ調査、試作、製品化のための設計変更、量産化を企業が担当し、基本設計、性能試験・評価ならびに改善指針を当研究機関が担当する.特に、性能試験や評価は企業側研究者と共同して行う.

必要性:共同研究の必要性は、当研究機関では理論的設計能力を有しても、試作、製品化能力に欠ける.また、企業側では理論的背景を持たないため、ニーズを知りながらも製品化できなかったり、製品化してもどのように改善すべきかの指針を持たないなど、大学との共同研究により更なる発展が相互に期待できるからである.

 

 

期待される研究成果

(1)平面スピーカの振動対策と音質改善に関する研究:安価で省スペース・高音質のスピーカの量産化.自然な再生音を実現することで、長時間の使用においても疲れ難く、作業能率の向上や快適な生活音環境の維持に貢献できる.

(2)屋外音環境改善に関する研究:屋外イベントでの周囲住民への騒音影響を低減して苦情を少なくし、しかも音質の変化が少なく違和感無く屋外でのイベントが実現出来る.シミュレーションプログラムによる他の遮音・吸音システムの設計支援.

(3)ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究忠実な再生音を実現することで、音源収録時の音源の空間位置関係が音響的に再現可能となり、音響的情景描写が実現できる.このヴァーチャル音環境を実現することにより、聴覚をよりどころとする視覚不自由者の音響による支援が見込まれる.また、聴覚に関する実験に用いる事により、実環境と同等の音場を再現でき、騒音や環境音の心理評価や印象評価などでより高精度な実験結果を得ることが期待できる.

 以上の各研究に共通して用いる音質評価システムは、音響システムの音質改善指針を与えることが可能となり、種々の音響システムの質的改善に有効となることが見込まれる.

 

研究成果の実用化の見通し

(1)平面スピーカの振動対策と音質改善に関する研究

電磁型の平面スピーカは現在量産化直前の試作試験段階で、第一ステップの量産化目前である.一方、振動解析と音質との関連を評価する手法の確立は、音質評価の基本要因に関するこれまでの研究成果と音響物理特性や材料特性との関連付けを纏め直すことで実用化の見とおしがある.さらに、静電型平面スピーカは、構造の研究段階で音響出力が十分に得られる導電性薄膜材料の開発に依存するが、高性能樹脂ポリイミドの表面改質手法を見出し、低パワーで高い音響放射性能を達成することにより実現が見こまれる.

 

(2)屋外音環境改善に関する研究

回路理論を用いた遮音性能予測手法は既に得られており、吸音性能の予測式も導出の見込であり、吸音・遮音・回折による減音効果を総合的に評価し得るシミュレーションプログラムの実用化は見通しがある.また、遮音箱は現在基本的設計段階であり、2年後の製品化を見込んでいる.

 

(3)ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究

室内吸音システムは3年後までには実用・製品化の見通しがある.振動対策の視点から音質改善、音響表現力向上に寄与する音響制御システムの開発・製品化を、5年後を目処に予定している.

 

研究成果の公表計画

(1)3年後には電磁型平面スピーカの製品化し公表する.静電型平面スピーカを製品化し公表する.特許出願を予定しており、その後、学会での発表を予定している.

(2)3年後までには屋外スピーカの背面放射音低減システムを製品化し公表する.また、特許出願後、学会発表を予定している.

(3)製品化とともに学会などで随時学会・論文発表を予定している.

 

平成19度までの研究成果

(1)平面スピーカの振動対策と音質改善に関する研究 :電磁型平面スピーカ:平成18年に製品化。

スピーカ型番   :DF−375(インピーダンス:4Ω、最大定格入力:15W、周波数特性:100Hz-15KHz)
共同開発メーカー:DigifusionJAPAN
搭載テレビ   :シャープ液晶テレビ アクオス ヨーロッパ向け仕様


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)屋外音環境改善に関する研究 :屋外スピーカの背面放射音低減システムの設計・試作・試験

特許出願(特願2004-301606)、公開(特開2006-115303

   名称:スピーカボックス

 

(3)ステレオ再生音の3次元空間表現技術に関する研究 

   1)室内吸音システムの製品化:

製品名:KQ-1

     メーカー:KRYNA & PLUTON

   2)音響・振動制御システム

   @音響機器の音質を改善するための支持装置の開発(多段構造スパイク)

特許第848987  発明の名称:振動防止支持装置

特許申請者:広島TLO

技術移転先KRYNA & PLUTON (新聞記事:日刊工業新聞中国新聞

      特許技術を用いた製品・・・製品名:D-Prop

 

     Aスピーカシステムの音質改善用スピーカ支持装置の開発

特許出願:特願2007-029315  発明の名称:スピーカの振動除去装置

特許申請者:広島TLO

技術移転先KRYNA & PLUTON  (新聞記事:日刊工業新聞中国新聞